僕の中で生きている 僕が愛したもの達みたいに

あなたの中で生きていたいよ(amazarashi/エンディングテーマ)

 

COMBO×COMBO『茜色に染まるあなたへ』、もりもりお稽古しております。

 

今回はおばあちゃんと孫のお話ということで、おばあちゃん子の私は嫌でもおばあちゃんのことを思い出します。

小学生の頃は毎年キャンプに連れて行ってくれて、離れていてもいつも私のことを気にかけてくれるおばあちゃんも、今年で71歳になります。全然そうは見えないくらいに若々しくて可愛らしい人です。

親戚に「もう成人式なの!?早いねえ」などと驚かれる経験をされた方は多いと思うのですが、こちらもこちらでもう71歳なの?という気持ちです。いつまで経ってもおばあちゃんは年を取らないような気がしてしまいます。雨が降っただけで車で迎えに来てもらったり、演劇部の県大会に足を運んでもらったり、大好物のささみのフライを作ってもらったり、そんなことばかり思い出します。

 

私はとにかく母方のおばあちゃんが大好きで、小さい頃は地震が怖くて、万が一地震が起きて会えなくなったらどうしようと思っただけで泣いてしまうくらいでした。おばあちゃんはここに避難してみくにはここに避難するから、もしそうなっても落ち着いたら会えるんだよ、なんて諭されたことを覚えています。

 

上京して会う機会も減って、メールをもらってもなかなか丁寧に返せなくなって、毎年送っていたお誕生日おめでとうのメールを忘れてしまう事もあって、我ながら祖母不孝……そんな言葉はないか、けど、祖母不孝な孫娘だなと思います。

岐阜から芝居を観に行くのは体力的に厳しいから応援だけしてるね、と入学当初に言われて、体感以上の速度で時間が早く過ぎてしまうこと、年齢を重ねたおばあちゃんにとってのその時間がどれほど重たいものなのかを改めて感じました。

それでも年に数回帰省してご馳走を振舞ってもらうだけだと実感はわかなくて、時間さえ取れたらまた一緒にキャンプに行けるような気がしてしまいます。きっともうおじいちゃんとおばあちゃんにテントを立ててもらうことは出来ないのに、私だけはいまだに子どものままで進めずにいます。

 

去年、順風男女さんの名古屋公演におばあちゃんが来てくれました。高校1年生以来、実に6年ぶりに私のお芝居を観て、面会で目の前に来たおばあちゃんの身体が私よりもずっとずっと小さくて、観に来てくれてありがとうと抱きしめながらわけもなく涙が溢れたことを思い出します。

地震が怖いと泣きついた時も、蒸し暑い8月の夜に小さなテントの中で一緒に寝た時も、おばあちゃんの身体は私より大きくてあったかくて、いつも私が寝付くまでずっと背中を撫でてくれた手だって私よりも大きかったはずなのに、いつのまにか追い越してしまいました。

DVDが欲しいから予約したいと言ってくれたおばあちゃんに予約の仕方を教えながら、ずっと泣いていました。私が東京で演劇を続けていくのだとしたら、これがおばあちゃんに観てもらえる最後の作品なのかもしれない、と思いました。おばあちゃんは届いたDVDを観てくれたかな。

 

でもきっとそれはおばあちゃんに限ったことではなくて、例えば応援してくれていたファンの方が就職して地方に行ってしまうことだったり、ふとしたきっかけで私から離れていくことだったり、そんなことがあるたびに、ああ、これが最後になってしまうのかなと思うのです。

演劇をやる以上は何ステージ観てもらおうと全て一度きりの観劇体験になってしまうし、客席に座るお客様の大多数とはそれきり会うこともなかったりするのだと思うと、時々やりきれない気持ちになります。映画やドラマだったら離れたところにいる人にまで届けられるのに、なんて思うと同時に、生身で目の前で演じるからこそ届くものもあるし、私はそれが好きで演劇をやっているし。

 

だから今回も、色んな気持ちを抱えつつやっぱり「来てください」と言います。大好きなおばあちゃんに観てもらうことができなくとも、私は今、私が信じるものに全力をかけるしかありません。

演劇が好きです。演劇はいま、ここにいる人にしか届かないけれど、だからこそ好きです。どうか観に来てください。

 

年末に、おばあちゃんの作るささみフライがまた食べたいな、と言った時、おばあちゃんは昔何度も作ってくれたことを忘れていたけれど、私は確かにあのあったかくてサクサクしていて、小さいわりに手間のかかるささみフライを覚えているし、その時作ってくれたフライに昔はなかった海苔が巻かれていたことも覚えています。

私たちの作る作品も、そうして誰かの中に残っていくのだとしたら、残ってくれるのだとしたら、それは何より素敵なことなんじゃないかと思います。

 

あの味が恋しくて何度も作ってみたけれど、私は未だにささみの筋がうまく取れません。

ああ、おばあちゃんの作るささみフライがまた食べたいなあ。

 

 

【次回出演】

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